N-ONE RS 6速マニュアル

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ホンダ「N-ONE」は2020年11月にフルモデルチェンジされて新しく生まれ変わりました。初代モデル発売から8年経過して初のフルモデルチェンジとなりました。2代目N-ONEの外観はキープコンセプトにより先代のスタイルを引き継ぎ、フロント部分とリア部分のみに若干の変更が加えられました。中身としては内装が大幅に変更されており、エンジンやプラットホームも一新されました。そして安全運転支援システム「ホンダセンシング」に強化され、安全性能が更に向上しました。

何と言っても注目はスポーツグレード「RS」の6速マニュアルトランスミッションです。軽自動車規格の前輪駆動方式(FF)を採用したターボ車では初となる6速MTが追加されました。車好きなら間違いなくCVTよりも6速MTを選択すると思います。しかも車両本体価格がCVTと6速MTのどちらも消費税込1,999,800円です。販売店の情報によりますと実際に6速MTの方が売れているとの事です。当然ながら将来的に中古車としての流通も6速MTの方が多くなります。ネットやSNSでも注目されているのは6速MTで、それだけ強烈なインパクトがある証拠だと考えられます。

ホンダ「N-ONEオーナーズカップ」で使用される車両はFFのターボモデルで、トランスミッションはCVTに限定されております。残念ながら現状では6速MT車両での参加は認められておりません。せっかく新たに6速MTを追加設定したのに、どうして参加が出来ない規定にしたのか非常に疑問です。たぶん同じ疑問を持っているモータースポーツ関係者やファンは多いと思います。理由としてはいくつか考えられますが、一番はCVT車両限定レースへの強いこだわりだと考えられます。他にも運営側の体制や費用の問題など様々な事情が考えられます。しかしながら6速MTで参加が出来ないのは参加者として非常に残念に思います。

現状では難しいかもしれませんが、将来的には6速MT車両での参加も認めるべきだと個人的に思います。トヨタヴィッツレースや今シーズンから始まるヤリスカップの様に、MT車両とCVT車両をクラス分けして混走にすれば良いのかと思います。そうする事によって参加者の幅が広がり、今まで以上に参加台数も増加すると考えられます。そしてレース自体も更に注目度が高まり、今まで以上に盛り上がると考えられます。メーカーや主催者の柔軟な対応に期待し、N-ONEオーナーズカップが今後もより楽しいレースに進化する事を心から願っております。

タイヤ選択のポイント

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ナンバー付ワンメイクレース「N-ONEオーナーズカップ」で使用するタイヤは低燃費タイヤに限定されております。メーカーやブランドは指定されておりませんので、好みのタイヤを自由に選択する事が可能です。イコールコンディションの高いワンメイクレースにおいて、タイヤ選択はかなり重要な要素となります。

メーカーのサポートを受けている場合を除き、ドライバーやチームが自らの考えや好みでタイヤを選択します。選択の基準は基本的に性能が第一優先で、次に価格やライフ・こだわり・使い易さなどになります。ではどのタイヤを選択すれば良いのか、参考までにポイントを押さえながらメーカー別で性能を比較してみます。

比較するタイヤメーカーは、ヨコハマ・ブリヂストンダンロップグッドイヤーの4社です。タイヤサイズは全て指定の165/55R15・75Vです。

1.転がり抵抗性能 等級はAAA・AA・A  (AAAが最高)

  1. ヨコハマ(アドバン・フレバV701)  :A
  2. ブリヂストン(レグノGRレジェーラ)  :A
  3. ダンロップ(エナセーブRV505)   :AA
  4. グッドイヤー(E-Grip RVF02)AA

2.ウエットグリップ性能 等級はa・b・c・d(aが最高)

  1. ヨコハマ(アドバン・フレバV701)  :
  2. ブリヂストン(レグノGRレジェーラ)  :b
  3. ダンロップ(エナセーブRV505)   :c
  4. グッドイヤー(E-Grip RVF02):c

3.タイヤ外径

  1. ヨコハマ(アドバン・フレバV701)  :563mm
  2. ブリヂストン(レグノGRレジェーラ)  :563mm
  3. ダンロップ(エナセーブRV505)   :567mm
  4. グッドイヤー(E-Grip RVF02)567mm

4.タイヤ総幅

  1. ヨコハマ(アドバン・フレバV701)  :170mm
  2. ブリヂストン(レグノGRレジェーラ)  :170mm
  3. ダンロップ(エナセーブRV505)   :171mm
  4. グッドイヤー(E-Grip RVF02)171mm

以上の4項目がタイヤ性能優先でのタイヤ選択のポイントとなります。大きく分けるとレースコンディションを考慮して、ドライ重視にするのかウエット重視にするのかの違いになります。外径は大きい方が車速が高くなり燃費も向上しますので、特にレースでは有利になります。総幅は広い方が当然グリップ性能は向上しますが、転がり抵抗も増加してしまいます。現状では全て100%完璧なタイヤはありませんので、価格やライフなども含めて慎重に選択する事が重要となります。

スポーツランドSUGO攻略法

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スポーツランドSUGOは宮城県柴田郡村田町にある総合モータースポーツ施設です。レーシングコースは右回り全長3,586km(4輪)で、国際自動車連盟FIA)公認の国際サーキットです。1975年のオープン当初は全長2,66kmのハイスピードコースでしたが、1987年に大規模改修されて現在のテクニカルコースへと生まれ変わりました。そして2021年にはピットロード拡張に伴ってホームストレートが外側に若干移動したり、ピットロード出口が3コーナー出口側へ移動したりなど部分改修されました。SUGOはテクニカルコースではありますが、比較的に平均速度が高いスリリングな中高速サーキットです。

N-ONEオーナーズカップでのSUGOコースレコードは、昨年の第12戦で記録された1分59秒819です。しかも予選ではなく決勝中のベストラップなので驚異的なタイムだと言えます。そして昨年の第6戦では、本番前日の専有走行にて非公式タイム1分59秒506が記録されております。N-ONEは今年もSUGOで6月と10月の計2回が予定されております。当日の天候やコンディションにもよりますが、間違いなく1分59秒台の熱い戦いになるかと思います。

自身のSUGO自己ベストタイムは2分00秒170です。コースレコードに比べるとまだまだ不十分ですが、自分なりのSUGO攻略法を説明させて頂きます。N-ONEはナンバー付の軽自動車ですので、140キロでスピードリミッターが作動します。実際にはメーター読みで、132キロから133キロくらいでリミッターが作動します。タイヤの外径や空気圧によって多少の違いがありますので、135キロくらいまでが正常な最高速となります。もし135キロを上回る様であれば、違法なチューニングが施されている可能性が強いです。ブレーキは基本的にABS(アンチロック・ブレーキ・システム)を作動させない様にブレーキングします。ブレーキが必要なコーナーは、1コーナーと4コーナー・レインボーコーナー・馬の背コーナーの4箇所です。

SUGOの1コーナーブレーキングは、50メートル看板を基準に少し過ぎた辺り45メートルくらいで開始します。1コーナーは若干上りになっておりますので、フルブレーキングしなくても大丈夫です。スピードをコントロールする程度のブレーキングで進入します。2コーナーは少しアクセルコントロールをしながら進入し、立ち上がりはアウトまで膨らまずにコース中央のラインを取ります。3コーナーはアクセル全開でも走行出来ますが、少しだけアクセルコントロールした方が良いです。4コーナーのブレーキングは右側のゼブラが終わる辺りで開始し、フルブレーキでブレーキングします。S字コーナーはアクセル全開のままで走行します。ハイポイントコーナーは少しアクセルコントロールして進入します。レインボーコーナーはスピードをコントロールする程度のフレーキングで進入します。

バックストレッチでは中間点付近からスピードリミッターが作動し、最高速を維持しながら同じスピードで馬の背コーナーへ向かいます。馬の背コーナーのブレーキングは50メートル看板を基準に少し手前の55メートルくらいで開始し、フルブレーキでブレーキングします。SPイン・アウトの2つのコーナーは、どちらも少しアクセルコントロールして進入します。最終コーナーはアクセル全開のままで走行します。最終コーナーはドライバーによってライン取りが違いますので、練習走行で実際に色々試した方が良いです。基本はアウト・イン・アウトですが、イン寄りのラインやアウト寄りのライン・ミドル重視のラインなど様々です。ホームストレートは1コーナーブレーキング位置の少し手前でスピードリミッターが作動します。スピードリミッターが作動しない場合もありますので、最終コーナーの良し悪しが判断出来ます。

今年の部分改修によって安全性が更に高まり、具体的には3コーナーの立ち上がりエスケープゾーンがアスファルト舗装されました。他には最終コーナーのアウト側もアスファルト舗装され、全体的に高速コーナーの安全性が高まりました。以前はエスケープゾーンがサンドトラップやグリーンだったので、高速コーナーでのコースアウトやクラッシュが非常に多かったです。特に3コーナーやSPインアウト・最終コーナーの高速コーナーでのコースアウトは、レース車両が全損する程の大きなクラッシュが多かったです。エスケープゾーンのアスファルト舗装は数年前から徐々に改修されており、今年からは今まで以上に安心してレースを楽しめる様に改良されました。

スポーツランドSUGOは地元ホームコースで、1990年から数え切れないほど数百回も走行しております。そして他のサーキットに比べて中高速のレイアウトが大好きです。若い頃に初優勝したのもSUGOなので、個人的に思い入れの強いサーキットです。今年から更に新しく生まれ変わったSUGOで、今後も出来るだけ多くの方々にサーキット走行やレースを楽しんで頂きたいです。今後はどれだけ長くレースを続けられるか分かりませんが、ドライバーを引退した後も何らかの形でレースに携わりたいと思っております。

セッティングの基本

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ナンバー付きワンメイクレースの車両は改造範囲が狭いので、他のレースと比べてイコールコンディションに近いです。同じ条件に近い状態で他と差を付ける為には、レース車両のセッティングがとても重要になります。車両のパワー差が少ないので、ストレートスピードはほとんど違いがありません。違いが出るのはコーナーリングスピードで、その為には足廻りのセッティングが最も重要になります。

足廻りのセッティングにはサスペンションのバネレートや減衰力、車高・アライメント・タイヤの空気圧などがあります。N-ONEオーナーズカップの場合は、指定された数種類のサスペンションの中から好みの物を選択して使用します。サスペンションのメーカーによってそれぞれ特性が違いますので、まずはどのメーカーを選ぶかがポイントとなります。メーカーによって10万円台の物から20万円台の物まで様々ありますので、予算を考慮しながら慎重に選ぶ必要があります。

サスペンションのメーカーは独自で何度もテストしておりますので、最初からN-ONEに合った状態で販売されております。スプリングは最初にメーカーがセットしたバネレートで十分ですが、リアに関しては好みで変更しても良いかと思います。減衰力はメーカーが推奨している値を基準にスタートし、フロントとリアどちらともプラス・マイナス調整します。メーカーがセットした減衰力はあくまでもスタンダード仕様なので、比較的軟らかめにセットされている場合が多いです。

レース車両の車高は出来るだけ低い方が有利ですので、車両規則の最低地上高10センチぎりぎりに調整します。ただしレース終了後のタイヤの減り方を考慮しなければなりませんので、多少は余裕をもってセッティングした方がベストです。車両の前後バランスとしては、フラットにするかリアを上げて前過重にするか二種類の選択になるかと思います。アライメントはフロントのみ調整が可能で、リアは調整が出来ない固定式です。フロントの調整はサスペンションのキャンバー角とタイヤのサイドスリップを考慮しながらセッティングします。

そしてサスペンションの次に重要なのがタイヤです。N-ONEオーナーズカップの場合は低燃費タイヤ(エコタイヤ)の使用が義務付けられております。タイヤのメーカーやブランドは自由に選択する事が可能です。タイヤのメーカーによってそれぞれ特性が違いますので、価格を含めて何を重要視して選択するかがポイントとなります。現状ではヨコハマ・アドバンユーザーが一番多く、参加者全体の約80%を占めております。残りの20%がブリヂストンダンロップグッドイヤーなどです。

エコタイヤは街乗りを重視したラジアルタイヤですので、乗り心地は良いですがサーキット走行には不向きなタイヤです。レースに不向きなタイヤでレースをするには、経験者にしか分からない意外なコツがあります。それはタイヤの空気圧を標準の倍くらいに上げる事です。エコタイヤは乗り心地を良くする為に、構造上タイヤの剛性が弱いです。タイヤの空気圧を高めにする事で剛性が強くなり、同時に接地面積が減る事により転がり抵抗が少なくなります。つまりタイヤの空気圧を高めにすると、ストレートもコーナーも両方とも有利になります。

N-ONEオーナーズカップは本格的なレースに比べると物足りなさはありますが、ナンバー付きワンメイクレースなりの奥深さや楽しさがあります。どのサーキットでも参加台数が多いので自分の実力が分かりやすく、努力すれば努力したなりに順位も上がります。チームやドライバーにとって成績は大切ですが、一番大切なのはレースの成績にこだわらず純粋にレースの雰囲気やバトルを楽しむ事だと思います。気軽に参加しやすいN-ONEオーナーズカップで、今後も多くの皆様にレースの醍醐味を味わって頂きたいと思っております。

N-ONEでレース参戦

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2014年から軽自動車のナンバー付きワンメイクレース「ホンダN-ONEオーナーズカップ」がスタートしました。軽車両のJAF公認レースとして当初から注目を集め、参加台数が年々増加している人気の高いレースです。N-ONEレースでの一番の魅力は何と言っても低コストでレースに参加出来る事です。軽車両なので初期投資やランニングコストが普通車と比較するとかなり安く抑えられます。そしてもう一つの魅力は参加車両がCVTのオートマミッションである事です。近年ではAT限定の自動車運転免許を取得する若者が増えておりますので、このレースであればAT限定でも参加が可能となります。何かと敷居が高いと言われるモータースポーツですが、N-ONEであれば誰でも気軽に参加する事が出来ます。

逆を言えばマニュアルミッションにこだわりのあるドライバーからは敬遠されるかもしれません。実は長年レースを続けてきた私もその一人で、最初は全く興味がありませんでした。レース車両はマニュアル車との強い固定観念があり、シフトチェンジやヒール&トゥなどもレースの楽しさだと思っております。しかしながらレース活動に関して悩んでいた時期に、偶然にもN-ONE参戦の機会が与えられました。N-ONEオーナーズカップは人気のあるレースなので、どんなもんか気分転換に出てみようと考えた事が参戦のきっかけです。そして軽い気持ちで地元のスポーツランドSUGOだけスポット参戦する事になりました。

2015年N-ONEオーナーズカップ第9戦スポーツランドSUGOがN-ONEのデビュー戦です。ファイナル戦直前のレースでしたので、シリーズ争いをしているレギュラーメンバーはほぼ全員参戦しておりました。車両に慣れるため事前に1回だけ練習をしてからレースウイークの専有走行となりました。車両はかなり特殊で最初は色々と苦労しましたが、徐々にCVTや低燃費タイヤに慣れる事が出来ました。足廻りは車高調整式ダンパーなのでしっかりしていますが、エコタイヤの性能が低すぎて違和感が強いです。CVTは最初のうち何か物足りなさを感じますが、慣れてくるとブレーキングやコーナーリングに集中が出来て良い感じになります。車両オーナーやメカニックのお蔭もあり、専有走行の結果は意外にもトップで終える事が出来ました。

金曜日の専有走行から予選・決勝までの3日間全て良い天候に恵まれ、本番も晴れのドライコンディションで行われました。土曜日の予選は精神的なプレッシャーに負けてしまい悔しい3位。日曜日の決勝はスタートで後車に抜かれて4位となり、最後までそのままの順位でゴールとなりました。表彰台は確実と思っていましたので、非常に悔しい残念な結果となってしまいました。この時の悔しさが今でも忘れられず、表彰台に上がる事を目標にその後も参戦を継続しております。なかなか目標は達成出来ませんが、今後も諦めずに挑戦を続けたいと思っております。

N-ONEオーナーズカップは誰でも気軽に参加が出来る楽しいレースです。特殊な車両で多少はクセがありますが、年齢性別は関係なくどなたでもすぐに慣れると思います。他のワンメイクレースと比べると参戦コストもそれほど掛かりません。レースに興味や関心のある方には入門用として最適なレースだと思います。モータースポーツ人口の底上げをする意味でも大切なカテゴリーだと思います。今後のレース活動において自身が楽しむ事はもちろん、これから新たに始める方々へのアドバイスやサポートも続けて参ります。レースには環境問題や省エネ問題など厳しい側面もありますが、出来るだけ多くの方々にモータースポーツの楽しさを伝えたいと思っております。

ヴィッツレースに挑戦

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トヨタヴィッツレースは2000年にスタートした国内初のナンバー付き車両限定のレースです。車検付きの車両なので一般道も走行が可能で、そのまま自走でサーキットへ移動してレースに参加出来ます。従来のナンバー無しレース専用車両と比べて、誰でも気軽に参加する事が可能な低コストのレースです。ヴィッツレースの魅力は何と言っても移動が簡単な事です。レース専用車両は公道を走れないので、積載用のトラックに車両を積んで移動しなければなりません。積載車を用意してレース車両を移動したり、車両を積み下ろしする手間と時間がかなり大変でした。そして積載車を所有していない場合はレンタル費用も掛かってしまいます。レースとしてはレース専用車両の方が本格的で楽しいですが、車両の移動や費用の問題が一番の難点でした。

ナンバー付きレース車両は車検を有する車両なので改造範囲が狭く、レース用に改造する費用が比較的に安く済みます。しかしナンバー無し車両では必要がない車検費用自動車保険費用が掛かってしまいます。維持費を考えるとそれぞれメリット・デメリットがありますが、トータルで考えると改造範囲の狭いナンバー付きの方が確実に安くなります。この低コストがヴィッツレースのもう一つの魅力です。ただし改造範囲が狭いので、レース車両としてはストリート仕様に近いです。重量は比較的に重くて、足廻りは乗り心地を考慮したソフトな仕様です。使用するタイヤはレース用ではなく一般のラジアルタイヤです。つまり車両のポテンシャルが低く、サーキット走行には少し無理のある仕様なのです。

実際にサーキットを走行してみると違いが明らかで、レース専用車両と比べると全く別物でした。サーキット走行では重量と足廻りの違いは非常に大きく、ポテンシャルが低い車両を速く走らせる事はかなり難しいです。過去の経験もほとんど役に立たず、違和感を感じながらの走行が続きました。車両の違いによって乗り方もセッティングも全く違いました。順応性に乏しい私は慣れるまで時間が掛かってしまい、初年度は苦しい一年となりました。成績は頑張ってもトップ10にすら入れませんでした。やっとの思いで乗り方が分かってきたのは二年目に入ってからです。成績も何とかシングルに入れるようになり、一度だけ5位に入賞する事が出来ました。

どのカテゴリーでも奥が深いレースは非常に難しいスポーツです。車両の違いや足廻りの違い・タイヤの違いなどで乗り方やセッティングが変わってきます。ドライバーは与えられた条件で車の持つポテンシャルを最大限に引き出さなければなりません。上位を目指すにはより的確な判断力と理解力が必要とされます。そしてメカニックやエンジニアとのコミュニケーションも必要になります。細かな情報をお互いに共有しながら、チーム全体で良い方向に導く事が重要です。最初はナンバー付きレースに対して少し抵抗がありましたが、想像しなかった新たな発見や収穫が沢山ありました。結果的に様々な勉強が出来たので、ヴィッツレースに参戦して良かったと思っております。

目標はシビックレース

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1990年代のワンメイクレース最高峰はホンダシビックレースでした。ドライバーなら誰でも目指す憧れのカテゴリーで、日産マーチレースでデビューした私もその中の一人でした。いつかはシビックレースに参戦したいという明確な目標を持って、入門用カテゴリーのマーチレースで頑張りました。そしてマーチレース初優勝を機に、1つずつ上のカテゴリーへステップアップしました。マーチレースの次にトヨタスターレットレースと三菱ミラージュカップを経験し、レースデビューから5年後の1997年に念願のホンダシビックレースに参戦する事になりました。

シビックレースは全国のサーキットで開催されており、全国転戦のインターシリーズと各地方戦の東北シリーズ・関東シリーズ・関西シリーズ・西日本シリーズがありました。ワンメイクレース最高峰という事で非常にレベルが高く、参戦しているチームは本格的なプロのレーシングガレージやプロのドライバーが多かったです。車両はN1規定のイコールコンディションではありますが、ボディーやエンジン・足回りなどがチームによってぞれぞれ大きな性能差がありました。つまり車両の選択やチームの選択・メンテナンスガレージの選択が非常に重要となります。この事は他のどのカテゴリーにも共通する最も大切な要素だと思います。

1997年ホンダシビックレース東北シリーズ開幕戦スポーツランドSUGOにやっとの思いで参戦しました。最初は憧れのレースに参戦出来るだけで十分に満足感があり、成績は二の次でレースを楽しんでおりました。開幕戦は最悪のウェットコンディションで完走するだけが精一杯のレースでした。生き残りレースとなった開幕戦の成績は10位くらいだったと思います。それでも充実感と満足感が強く、無事に完走が出来た喜びの方が強かったと記憶しております。優勝したドライバーは同じチームの選手で、後にこの年のシリーズチャンピオンとなりました。優秀なチームメイトに恵まれて、初年度は様々なノウハウを勉強する事が出来ました。

シビックレースは想像以上にハイレベルなレースで、ただ参戦するだけの私のレベルでは全く勝負になりませんでした。初戦から金銭的にも苦しかった状況の中、チームやスポンサーの協力を得て少しずつレベルアップを図りました。そして同年シリーズ中盤の仙台ハイランドレースウェイで、ウェットコンディションの中どうにか予選6位に入る事が出来ました。決勝は残念ながら接触などにより後退してしまいましたが、予選での6位が自分なりの自信となりました。この予選結果をきっかけに、頑張れば何とかなると自分を信じて前向きに5年間シビックレースを続けました。

しかしながら5年間で5位1回の6位1回で、入賞がたったの2回だけだったのです。さすがに自分は才能がないと痛感させられて心が折れてしまい、その後しばらくはレースを休む事になりました。でも大好きなレースを決して諦める事なく、いつかまた復活してやると思いながら必死で借金の返済に専念しました。そして借金完済後2年ぶりに、ナンバー付レースであるトヨタヴィッツレースにて復活を果たしました。この復活のタイミングで、レースにはなるべくお金を掛けずに楽しむ事を優先する考えに切り替えました。そして無理のない範囲で出来るだけ長く続ける事を更なる目標として、途中で数年間休みながらも何とか今日までレースを継続する事が出来ました。

念願のレースデビュー

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1980年代後半からフジテレビ系列でF1の放送が開始されました。日本人初のF1フル参戦ドライバー中嶋悟選手の影響で、日本でのF1人気が急激に高まりました。そして世界的なF1ブームに最も影響を与えたドライバーがアイルトン・セナ選手です。マルボロカラーのマクラーレン・ホンダをドライブするワールドチャンピオンのセナ選手は憧れのスーパースターでした。当時は峠道をただ自己満足で走っておりましたが、セナ選手の影響を受けて四輪レースを目指す事になりました。

1990年に社会人となり本格的にモータースポーツを始めました。最初は走行会でのサーキット走行で模擬レースを経験しました。コースは仙台ハイランドレースウェイとスポーツランドSUGO。安全性の高いサーキットでスピード制限のない全開走行は超快感でした。素人ながらに走行のルールや基本的なライン取りなどを学習し、少しでもサーキットに慣れるよう努力しました。サーキットを走れば走るほどレースへの思いが強くなり、2年間の修業を経ていよいよレースデビューとなりました。

1992年2月に国内B級ライセンスを取得し、翌月の3月に続けて国内A級ライセンスを取得しました。レーシングチームはお世話になっていた地元のチューニングショップでグランドスラムパル。カテゴリーは日産マーチレース東北シリーズ。レース車両はパルレーシングチームで使用していた中古レース車両を安く譲って頂きました。価格は当時で60万円くらいだったと思います。そのままの状態ではレースに参戦出来なかったので、少し手直しをしながら参戦の準備を進めました。時間的に開幕戦には間に合わず、6月の第3戦から参戦する事になりました。

25歳で遂に念願の四輪レースデビュー。日産マーチレース東北シリーズ第3戦、仙台ハイランドレースウェイ。参加台数は35台くらいで、その内の30台が決勝進出でした。デビュー戦なのでまず最初は予選通過が目標。何とか25位くらいで予選を通過し、決勝は20位くらいでフィニッシュだったと思います。2年間の下積み経験を活かして自信満々で挑んだデビュー戦ですが、かなり残念な結果に終わってしまいました。優勝した地元仙台のチームと比べて、ラップタイムが7秒ほど違いました。峠道では速いと思っておりましたが、もっと速い人が大勢いる事にカルチャーショックを受けました。悔しいやら情けないやら残念なデビュー戦でしたが、心折れる事なくその後も前向きにレースを続けました。そしてやっと2年後に悲願の初優勝となりました。

レースの魅力は何と言ってもスピードとスリル・バトルだと思います。一般道とは違ってスピード制限がないサーキットでは、どんなにスピードを出しても問題ありません。逆にアベレージスピードが一番速いドライバーが最優秀となります。一般道では決して味わう事が出来ない異次元の世界です。そのハイスピードに伴って、他車との接触やクラッシュなどの危険性も高くなります。このハラハラ・ドキドキのスリル感がレースの醍醐味だと思います。そしてスリルを味わいながら、ライバルである他車とバトルする事がレースの最も楽しい要素だと思います。基本的にレースに参戦するドライバーは全て車好きです。大好きな車でスピードとスリルを体感しながら、異次元の世界でバトルを楽しむレースはとても魅力的なスポーツだと思います。

自動車への強い執着心

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物心が付いた2歳頃には既に自動車が大好きになっておりました。私が生まれた昭和40年代では当時まだ車が一般的ではなく、どちらかと言うと裕福な家庭でのみ所有しておりました。我家は一般家庭に比べるとやや貧しい家庭で、両親共に自動車運転免許を所有していなかった事もあって車がありませんでした。今になって思うと、その為に車への興味や関心が特に強くなったのだと思います。自家用車がなっかた我家では長距離移動の際は公共のバスか汽車がほとんどで、タクシーを利用する機会は非常に少なかったと記憶しております。私にとって身近な存在ではなかった自動車は次第に憧れの対象となりました。

幼少時で一番の楽しみは伯父の車に乗せてもらう事でした。伯父夫婦は当時から自家用車を所有しており、機会がある毎に私を車に乗せてくれました。伯父が我家に来た時には帰り際に毎回短距離ドライブをしてくれました。私が住んでいた共同住宅地の周辺を2~3周してくれたのです。当時2~3歳頃の事ですが今でもハッキリ覚えております。今から50年以上も前の事ですが、とても楽しいドライブだったと記憶しております。そして同時にその様な優しい伯父の事も大好きになりました。今になって思うと、車好きになった要因として伯父の影響がとても強かったと思います。

当然の様にオモチャや遊びは車が中心でした。乗用車からバス・トラックそしてバイクなどのオモチャでいつも遊んでおりました。更には手作りのハンドルで運転の真似事までしておりました。その頃から車の運転にも強い興味を持っておりました。車のミニカーから始まって、小学生の頃はプラモデルやラジコンに夢中になりました。中で最もハマったのはスーパーカーとF1です。消しゴムを集めたり写真やポスター・下敷きなどを集めて楽しんでおりました。そしてスーパーカーショーを見に行って、たくさん写真を撮った事が父親との貴重な思い出です。特にカウンタックのスタイルとカッコ良さには子供ながらに強烈な衝撃を受けました。カウンタックは今でも憧れの名車です。

その後19歳になって遂に念願の自動車運転免許を取得しました。最初の車は真っ白の日産ブルーバード910型2ドアハードトップ1.8Lターボ。幼少時から車好きだった事や我家に車がなかった事などもあってか、最初の車は父親がプレゼントしてくれました。昭和55年式の6年落ち中古車で当時80万円くらいだったと思います。納車の日はとても嬉しくて感激した事を今でもハッキリ記憶しております。その日から私の長い長い自動車人生がスタートしました。当時主流だったヤンキーから始まって、後に峠の走り屋を経て四輪レースデビューとなりました。自動車レースは今でも趣味として継続しており、なかなか止められずに30年くらい続けております。身体が元気で動けるうちは、今後も無理のない範囲でレースを楽しみたいと思っております。

介護タクシーの業務内容

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介護タクシーを利用される方は子供から高齢者まで様々です。何らかの病気や障害によって移動が困難な方々が利用されます。移動方法も病気や障害の内容によってそれぞれ違います。中には自力歩行可能な方もおりますが、全体の約8割が車椅子での移動です。ストレッチャーで寝たまま移動する重症者は比較的に少なめです。そこで過去の経験から具体的にどの様な方々が利用されているのか整理してみます。

1.特別支援学校への送迎

身体障害や知的障害などを抱えた子供達の通学を支援します。朝7時半から8時半の間に自宅から学校へ送り、14時半から15時半頃に学校へ迎えに行き自宅まで送ります。曜日は基本的に月曜日から金曜日で、土日祝日と春休み・夏休み・冬休みの期間は学校が休みとなります。近年では両親共働きなどの事情により家族での送迎が難しくなっており、介護タクシーの必要性が高まっております。子供達が頑張っている姿に励まされ、逆に元気や勇気をもらう事もあります。家族同様に接する事が出来るので、子供達の努力や成長を感じる事も多いです。障害の状態によっては会話が出来ない子供がおりますので、専門的なコミュニケーション技術が必要となります。

2.人工透析患者の送迎

腎臓疾患により定期的に人工透析を受ける方々の通院を支援します。朝9時から10時の間に自宅から病院へ送り、14時から16時頃に病院へ迎えに行き自宅まで送ります。ほとんどの方が週3回の透析で、中には週2回の方もおります。透析時間は個々に違いますが、3時間から5時間くらいが多いです。透析は決められた日時に必ず受けなければならないので、皆さんとても大変な生活をされております。気分や体調が悪い時は病院を休みたい日もあるかと思います。ゴールデンウイークやお盆・お正月も関係なく通院しなければなりません。透析はベッドに横になって休みながら受けますが、心臓にかなりの負担が掛かります。透析後は疲れ切った状態になりますので、対応には細心の注意が必要となります。

3.通所施設への送迎

介護福祉施設でデイサービスやデイケアを受ける方々の送迎を支援します。朝8時半から9時半の間に自宅から施設へ送り、15時半から16時半頃に施設へ迎えに行き自宅まで送ります。施設へ通う回数は個々に違いますが、入浴を目的として週に2回が多いです。施設では健康チェックをした後に午前中は入浴をして休憩となります。昼食を終えて午後からはレクリエーションやリハビリをしてオヤツ休憩となります。病院とは違って、施設での有意義な生活を皆さん楽しみにされています。介護タクシー送迎時の短い時間も出来るだけ楽しんでもらえるように、対応には配慮や工夫が必要となります。

4.医療機関への送迎

病院への定期的な外来通院や入院・退院での送迎を支援します。外来通院は朝8時半から9時半の間に病院へ行きたいと希望される方が多いです。どうしてもこの時間帯に集中してしまうので、時間調整が出来ない場合はお断りしなければなりません。病院へ行く時間は予約により決められますが、受診後の帰りの時間は事前に決められません。したがって診察が終わり次第で連絡を頂き、その時の状況に合わせて対応する事になります。もし他のお客様と重なってしまった場合は、優先順位で順番を決めて数十分ほど待って頂く事もあります。初回では全く予測が出来ませんが、何度か利用されている方はある程度予測が出来ます。予測が外れる事もよくありますが、病院や患者によって診察時間がどれくらい掛かるか把握しておく事がポイントです。入退院の場合は比較的に時間が限られます。午前は9時半から10時半の間で、午後は13時から15時の間が多いです。そして外来通院と入退院のどちらの送迎も、ストレッチャーでの送迎が比較的に多いです。病院の場合は緊急を要する場合もありますので、送迎方法や介助方法など適切な対応が必要となります。

5.その他の送迎

学校・病院・施設以外での送迎は主に買い物や外食が多いです。付添い者がいる場合は送迎のみですが、付添い者がいない場合は付添いも行います。買い物のお手伝いをしたり食事やトイレの介助をします。介助の内容や方法は個々に違いますので、専門的な知識や技術が必要となります。特に長時間の移動や付添いの場合は、お客様の体調にも気を付けなければなりません。もし体調が悪くなった場合は、ご家族や病院・施設の担当者に連絡して指示を受ける必要があります。場合によっては近くの病院へ移送する必要もあります。他には件数としては比較的に少ないですが、冠婚葬祭や映画・コンサート・イベント・スポーツ・趣味活動など様々な送迎があります。病気を抱えていたり障害者や高齢者であっても移動の目的は健常者と同じです。相手の立場に立って相手の気持ちを理解する思いやりが大切です。

昨年より新型コロナウイルスの影響で介護タクシー業界も厳しい状況です。外出を制限されておりますので移動する機会が少なくなり、介護タクシーを利用する機会も同時に少なくなります。学校・病院・施設以外への利用はほぼゼロになりました。ワクチン接種が開始されてウイルス感染の収束が期待されますが、まだ先が見えない状況が続いております。普通の生活が出来るよう一日も早い収束を願っております。

介護タクシーの事業許可

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介護タクシー運転手は二種免許を取得したプロのドライバーです。現在では自動車教習所で二種免許を取得出来ますが、以前は運転免許センターで試験を受けなければなりませんでした。しかも試験はかなりの難関で、何度も繰り返し受験する必要がありました。当時は試験場近くの教習合宿所に宿泊しながら受験する人もおりました。直接受験しても100%不合格なので、試験用の教習所で10回ほど練習してから試験を受けました。最初の1回目は完走すら出来ずに途中で終了でした。2回目では完走出来ましたが不合格で、3回目でやっと合格する事が出来ました。

かなり苦労してやっとの思いで二種免許を取得し、その後にヘルパー等の講習を受けて数種類の福祉資格を取得しました。そして必要資格を取得してから介護タクシー事業許可の申請となりました。申請書類は非常に種類が多くて準備に時間が掛かります。通常は行政書士などの専門家に依頼しますが、時間があれば何とか自分でも準備する事が出来ます。そして初期費用を抑える為に自分で多量の申請書類を準備する事にしました。ちなみに専門家へ依頼する場合は30~50万円もの費用が掛かります。申請書類は営業所に関する資料や福祉車両に関する資料・開業資金に関する資料・取得資格に関する資料・本人を証明する資料など様々です。

事業許可申請が無事に受理されてから約1ヶ月後に法令試験があります。試験の内容は二種免許取得で学んだ事が多く出題され、他には事業を営む上で必要な事などが出題されます。そして試験合格から約1ヶ月後に事業許可が下ります。許可申請書類の準備に1ヶ月掛かったとすると、事業許可が下りるまでに合計して約3ヶ月掛かる計算になります。福祉車両やタクシーメーターなどの準備は、許可申請中に同時進行でも構いません。事前に準備を進めると早期に営業を開始する事が出来ます。その他に運賃料金の認可や営業開始届なども必要になります。

介護タクシーは1台での開業が可能で、要件は一般の個人タクシーと比べて厳しくはありません。タクシーの実務経験や無事故無違反などの条件がありません。事務所や駐車場も自宅を利用する事が可能です。特に持家の場合は比較的容易に準備を進められます。もちろん事務所は賃貸物件でも構いません。二種免許と事務所・駐車場・福祉車両・そしてやる気があれば誰でも開業が可能です。福祉限定のタクシーなので経営的に難しい面がありますが、高齢化社会において社会貢献度の高い非常にやり甲斐のある仕事です。将来的に独立開業を検討されている方には経験上お勧めの業種です。

個人タクシーの開業

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介護タクシー歴15年の実務経験を活かして、一般の個人タクシーを開業したいと考えております。事業内容を見直す上で非常に重要であり、近い将来の最も具体的な目標となります。一般乗用旅客自動車運送事業として、介護タクシーと個人タクシーの組み合わせはかなり有効的です。どちらもメリットとデメリットがありますが、組み合わせる事によってそれぞれのデメリットが軽減されます。そして最終的には個人タクシーのみに限定して、60歳以降も出来るだけ長く仕事を続けられる様にしたいと考えております。

一般の個人タクシー開業の理由は三つあります。一つは体力的な問題です。介護タクシーは運転の他に利用者の介助があります。利用者は自力歩行が困難であったり寝たきりの状態が多いので、その場合は必ず介助が必要です。例えばベッドから車椅子への移乗やベッドからストレッチャーへの移乗で、それぞれ逆の移乗もあります。場合によっては階段の上り下りなどの危険な介助もあります。動けない人を介助するにはそれなりの体力と専門的な技術が必要になります。もし介助で失敗した場合は重大な事故につながります。要介護者と介助者のそれぞれにケガなどの危険なリスクが伴います。現在54歳ですが体力的な今後への不安があります。将来的には体力面を考慮すると、利用者の介助を必要としない個人タクシーの方が良いと考えられます。

もう一つの理由は経営的な問題です。介護タクシー福祉車両を用いて営業します。福祉車両は専用のスロープやリフトが附属された特殊車両なので、一般の普通車と比べて車両の価格が高いです。他に車椅子やストレッチャー・踏み台などの福祉用具も必要となります。一般の個人タクシーと比べて、初期投資や維持管理・車両等の更新などに費用が掛かります。ところが運賃は個人タクシーとほぼ同じです。介助料をサービスしている今の現状では採算が合いません。そして乗降介助に時間が掛かる為に件数が制限されます。介護タクシー開業当時から経営面を考慮すると、営業効率の良い個人タクシーの方が利益率が高いと考えております。

もう一つの理由は営業形態の問題です。介護タクシーは基本的に完全予約制で「流し」や「待ち」が出来ません。営業時間帯はほぼ日中に限られ、夜間の注文はほとんどありません。逆に一般の個人タクシーは「流し」や「待ち」で効率良く営業が出来ます。そして日中の時間帯よりも夕方から夜間の時間帯の方が需要が多いです。状況によっては営業時間を夜間に限定して動く事も可能となります。昨年からの新型コロナウイルス感染の影響で今は夜間の営業が厳しい状況ですが、感染が落ち着いた後には問題ないと考えられます。お客様のニーズに合わせて営業時間帯を選択する事が出来るので、営業形態を考えても個人タクシーの方が有利であると考えられます。

一般の個人タクシーを開業するには実務経験や無事故無違反などの厳しい要件があります。介護タクシーと比べて簡単に開業する事が出来ません。実際に実現するか分かりませんが、少しずつ準備を進めております。今年は介護タクシー開業から15年の節目なので、今後や老後の事を考えて事業内容を見直したいと思っております。そして60歳を過ぎても仕事を続けられる様に頑張ります。

介護タクシーの難易度

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介護タクシーは社会貢献度が高くて需要が多い業種ですが、経営面では他業種と比べて難易度が高い業種です。経営の難しさには様々な要因があり、現状では改善が厳しい状況です。経営する上での考え方は、利益追求よりも細く長く続ける事を目標とした方が良いです。介護タクシーを必要とする人は多いので、地道にコツコツ努力すれば経営は成り立ちます。焦らずにじっくり考えながら事業を進めていく事が大切です。

難易度が高い要因の一つとして介護タクシー運賃の問題があります。事業所によって多少の違いはありますが、基本的に一般のタクシーと同じです。そして付随する介助料金は基本的に無料でサービスします。介助料が発生する場合は、危険度が高いとか難易度が高い・必要以上に時間が掛かる場合など業務内容で決まります。つまり通常の介助はサービスなので、一般のタクシーと比較して割に合わない計算になります。

業務内容に関わらず確実に介助料金を徴収する方法は、介護保険対応の介護タクシーにする事です。乗降介助料に対して介護保険が適用となり、利用者は一部負担金のみで利用が出来ます。そしてプラスになる介助料の分を踏まえて、介護タクシー運賃を安く設定する事が可能となります。しかし介護保険の認定を受けるには様々な条件があり、法人格が必要で従業員が2.5人以上などとハードルは高くなります。介護保険対応にするかしないかはそれぞれ一長一短ありますので、経営者の考え方次第になります。

他の要因として利用者一人一人に掛かる時間が長い為、一般のタクシーと比べて件数をこなせない問題があります。介護タクシーは基本的にドアからドアやベッドからベッドなので、移動時間の他に前後の乗り降りに時間が掛かります。例えば介護タクシーでの移動時間が30分の場合、乗車までに15分・降車してから15分掛かるとすると合計1時間となります。単純に計算すると多くても1日に10件前後の運行となります。

そして所要時間の問題に加えて、なかなか予定通り進まずに予約時間がずれてしまう場合が多いです。利用者は高齢者や障害者なので本人の思い通りにならずに時間が掛かってしまう場合や、病院や施設の都合で予定より時間が掛かってしまう場合があります。予約の段階である程度は考慮してスケジュールを立てますが、予想外に20~30分ずれる事はよくあります。

介護タクシーは基本完全予約制なので、一般のタクシーの様に「流し」や「待ち」は出来ません。つまり仕事の予定が空いていても、常にお客様からの連絡を待っているしかありません。そしてお客様が希望する時間帯はほぼ皆同じで、8時~9時・昼前後・14時から15時の時間帯に集中します。スケジュール管理をする上では、予約時間の調整や空いた時間の使い方などがポイントとなります。介護タクシーでの運行の他に、付き添いや見守りなどの業務も加えるとより合理的な経営が可能となります。

介護タクシーの成功法

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介護タクシー事業を成功させるにはいくつかの重要なポイントがあります。独立開業してから15年間、成功と失敗を繰り返して様々な事を学びました。事前に戦略を考えて運営しますが、実際に経験してみて分かる事も沢山あります。ちょうど15年の節目なので、過去を振り返って自分なりに整理してみます。

1.福祉車両の選び方

最初は軽自動車のワンボックスタイプでスロープ車が良いです。普通車と比較して維持費がかなり安くなります。車両選びのポイントとしては室内空間と使い勝手を優先する事です。メーカーや車種によって違いがありますので、カタログや現車で確認する必要があります。そして雪が多い地域では必ず四輪駆動車を選びます。

2.車両1台から開始

一般のタクシーと違って介護タクシーは1台から営業を開始する事が可能です。特に個人事業の場合は、1台から始めて軌道に乗ってから増車を検討します。個人差はありますが、営業を開始して半年くらいは利益が出ません。軌道に乗るまで最低でも半年から1年は掛かります。1台から様子を見て進めた方が効率良いです。

3.介護タクシーの名称

介護タクシーの名称(事業所名)は慎重に決めた方が良いです。ポイントとしては分かり易くて覚えてもらい易い名称にする事です。近年ではユニークな名称やイメージに合わない名称が増えておりますが、利用者は高齢者や障害者なので比較的シンプルにした方が良いです。当然の事ではありますが、名称の選択はかなり重要です。

4.事業所の場所

個人事業所の場合は自宅を事務所兼用とする場合が多いですが、実家ではなく賃貸であれば場所を変える事が出来ます。新たに場所を決める場合は立地が重要となります。ポイントとしては周囲に病院や施設が多い場所を拠点にする事です。そして可能な限り、人口が多い市町村を選んだ方が確実に有利です。

5.効率的な広告宣伝

最初は認知度を上げる為に様々な広告媒体を利用して宣伝します。近年ではインターネットを利用した広告宣伝が主流です。ホームページは必須で、他にSNS等での宣伝も加えた方がより効果的です。ちなみに15年前では電話帳や新聞・チラシなどを活用しましたが、思った程の効果は得られませんでした。

6.効果的な営業方法

基本ではありますが、お客様の所へ直接足を運んで営業した方がより効果的です。病院では医療相談室のケースワーカー、施設では生活支援員やケアマネージャーに直接会って営業します。そして繋がりが多ければ多いほど有利になります。病院では院長や事務長など、施設では理事長や施設長などに営業しても全く意味がありません。

7.介助での対応力

介護タクシーを利用する高齢者や障害者はそれぞれ病気や障害を抱えております。全て同じ様な対応ではなく、相手の状態や性格に合わせた対応が必要となります。自力歩行が可能な方や杖歩行の方、車椅子や寝台を利用する方など移動方法もそれぞれ違います。運転するだけではなく、相手に合わせて適切な介助をする事も重要です。

8.経営に即した増車

経営が軌道に乗った後に福祉車両を増車する場合は、経営方針に合わせて車種を選択する必要があります。軽自動車1台から始めて同じく軽自動車を増車したり、タイプの違う普通車や大型車を増車したり様々です。ポイントとしては同じ用途の車両を増車するか、用途を変えて寝台車などの車両を増車するかの違いです。

現在の高齢化社会は今後20年くらい続きます。したがって介護タクシーの需要も高いまま今後も推移します。介護タクシーは移動困難な方々をサポートする社会貢献性の強い業種です。昨年から続いている新型コロナウイルス感染の影響は実際ありますが、介護タクシー業界全体が今後より良くなる事を願います。

病院勤務からの独立開業

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介護タクシーとは高齢者や障害者などの移動が困難な方々を、介護しながら移送するタクシーの事です。病気や障害・ケガなどにより自力で移動が出来ない方々を援助し、福祉車両にて安全・快適に目的地まで移送します。福祉車両には専用のリフトやスロープが付いており、車椅子や寝台に乗ったままで乗り降りが可能です。歩行可能な方々や杖歩行の方々には、必要な手助けをする事によって普通の座席への乗り降りが可能となります。近年の高齢化社会では利便性や安全性において必要不可欠なサービスです。

大学を卒業後に以前から興味関心のあった医療の道へ進み、岩手県盛岡市の病院に事務員として就職しました。最初は事務局の総務課で主に雑用の仕事をしておりましたが、就職して約1年後に放射線科へ異動となりました。予期せぬ人事異動で不安や戸惑いがありましたが、MRI担当という事でほぼ強制的に異動となりました。MRIは磁気を利用した画像診断装置なので、当時は無資格で携わる事が可能でした。全くの素人が解剖学から勉強して何とか撮影方法を理解する事が出来ました。X線一般撮影の手伝いをしながら、その後MRIの業務を3年間続けました。そしてこの貴重な3年間がその後の人生に大きく影響する事になりました。

法律改正により医療の有資格者でなければMRIに携わる事が出来なくなり、必然的にまた事務局へ異動となりました。放射線科在籍中に放射線技師を目指して勉強しましたが、高倍率の専門学校へ入る事すら出来ませんでした。当時20代で若かったので、受験を3年挑戦しましたが合格する事が出来ませんでした。結局は放射線技師の資格取得を諦めて、再度また事務局で働く事になりました。情けないやら悔しいやらで一時は精神的に落ち込みましたが、気持ちを切り替えて事務員として頑張りました。その後は総務課の経理と医事課の医療事務を経験し、勤続15年で病院を退職する事になりました。

そして病院での経験を活かして起業したいという気持ちが強くなり、現在の仕事である介護タクシーを目指す事になりました。病院には子供からお年寄りまで様々な患者様がおります。病気や障害・ケガの種類や状態も人によって様々です。つまり相手によって柔軟に対応を変えなければならないのです。相手を思いやる気持ちを大切にして、相手に合わせた対応を心掛ける必要があります。この柔軟な対応は病院勤務時代に色々と経験しており、実際に介護タクシーの仕事でかなり役に立っております。介護タクシーの業務は高度な運転技術だけでなく、お客様に合わせた柔軟な対応力が必要とされます。今になって思うと、病院勤務で学んだ知識や技術はとても貴重な経験であったと有り難く思っております。